緋色の奇跡
「柊せんせー!!柊瑞杞先生っ!!」

「ん~?」


白衣をなびかせながら、後ろを振り返ると、そこにいたのは最近入った若い看護士の女性


「あら、菜月ちゃんどうしたのぉ~?」

「先生!!またそんな呼び方!!203の本郷さんの様子、ちゃんと看に行ってくださいました?」

「ん~今から行くとこぉ~」


「もう!」と言いながら困り顔をしている彼女を見ていると「若いって良いな~」なんて思ってしまう

だって私も、もうすぐ三十路……

考えたくもないけど……


「ほいほーい。あ、じゃあこれ差し入れ。ステーションで皆で食べて~♪」


そう言いながら彼女に紙袋を差し出すと、慌てながら菜月ちゃんはその袋を受け取る

ひらひらと手を振りながら、去っていく私に彼女が何か言っているような気がしたが、私は鼻歌を歌いながら、目的の病室へと足を踏み出した


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