緋色の奇跡
「痛っ……」


彼女の足をゆっくり確かめていくと、彼女はその顔を歪めた

たぶん骨が折れていたり、ひびが入っていたりするわけではなさそうだ


「やっちゃってるわ……何かで固定しないと」


彼女の痛めたくるぶしにハンカチを当てて、彼女の持っていたバックについていたスカーフで、私は彼女の足を固定していく

少しきつめにキュッと縛ると、私はフーと溜息をついた


「相変わらず手慣れてるな」


後ろから感心したように凌が呟くと、その隣で泉くんが「それより……」と冷静に状況を判断していく


「早くどうにかしてこっから出ねぇとな……」

「確かに……でもどっちに行ったら良いのやら……」


先ほどまで明るかったフロアは、今はチカチカと点滅する照明のみしか私たちの居場所を知らせてはくれなかった

沙良の応急処置をするのも、このおかげでだいぶと苦しいものがあったくらいだ


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