緋色の奇跡
「ダメ!凌くん瑞杞を止めて!!」


沙良の言葉に凌が瑞杞の方に駆け寄ろうとした瞬間、瑞杞はその場に崩れ落ちた

はぁ、はぁと不自然に切れ切れした呼吸をしながら、彼女は涙を流していた


「おい、瑞杞!?しっかりしろ瑞杞!!」


凌の言葉は彼女には届くかず、彼女はずっと苦しそうに呼吸を繰り返す


「瑞杞!!瑞杞、もう大丈夫だから……大丈夫だからね」


凌の後に続いて瑞杞のもとに駆け寄った沙良は、彼女を抱きしめてなだめるように彼女に声をかける

泣く子供をあやすように


『大丈夫』


その言葉を繰り返して囁く

彼女の見た世界は、鮮血の世界

叫ぶ女性の手元に倒れているショートカットの女性は、鮮血に包まれていたのだ

それが瑞杞の脳裏に、違う光景を重ねて映したのだった


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