緋色の奇跡
後ろから、沙良の手が伸びると、私の目の前にハンカチを差し出した


『ここじゃあ、患部洗う事は出来ないな』


そう考えて、私はそのハンカチを彼女の出血部分にあてがう

ぐっと力を込めて、これで血が止まる事を願う

それでもなお、彼女の血液は止まりそうにない


『止血帯法』


すぐにその言葉が脳裏をよぎるが、これはどうしても使いたくはなかった

傷口より心臓に近い位置にある動脈をスカーフ(止血帯)などできつく縛って指摘する方法

緩めに結んだ止血帯に棒などを入れて、出血が止まるまで、その棒をハンドルのようにくるくると回していく方法だ

しかしこれは最終手段

この方法にはリスクが伴う

この縛った止血帯を緩めるポイント

時間をちゃんと計って緩めていかなければ、血液が通らなくなったその先が死んでしまう

そうすれば意味がなくなってしまうから

止血帯法へと治療を変えようかと、悩み始めていると私の手に誰かの手が重なった


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