緋色の奇跡
「血、止めなきゃなんねーんだろ?」


私の手に重なった手は、凌の手だった

先ほどより強く押された彼女の患部は少しずつ、血の勢いを緩めていく

そっと彼女の首に触れると、脈は微弱だけれど、安定してきている

呼吸も弱々しいが、ちゃんとしていた


「あとは、何かで巻いておかないと……」


そう私が呟くと、先ほどまで泣き叫んでいた彼女のお友達さんが、私の方にハンカチを差し出した


「こ、これではダメですか?」

「……いいえ、ありがとうございます」


彼女からそのハンカチを帯状にすると、包帯を巻く要領で血の止まった足に巻いていく

丁寧に巻き終えて頭を上げると、数名のギャラリーが集まっていた

軽い拍手をもらいながら、お友達さんに向き合うと私は出来るだけゆっくりと優しい言葉と表情で話し始める


< 26 / 141 >

この作品をシェア

pagetop