緋色の奇跡
そんな事をふと考えながらも、私は彼らが捜してくれたものを副木に使い、患部を避けてハンカチで固定していく


「出来るだけ腕は動かさないようにして、病院に運んであげてください」


応急処置が終われば、注意点を述べてその場所は任せていく

それを繰り返しながら、私たちは緋色の世界を駆けまわった


「嬢ちゃん、この人」


次々と見ていく患者さんが、すべて軽症だとは限らない

懸命に下敷きになった人を助けて、私のもとに運んで来てくれるのだから、多くを助けたい

助けたいけれど……


「ごめんなさい。私じゃ無理です……」


応急処置は出来ても、私は所詮一般人だ

助けられない人もたくさんいる

その苦しさに胸が詰まるたびに、隣にいる凌が私の手を黙って握ってくれた


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