緋色の奇跡
ビルが連立していたはずの町並みは、この地震の酷さを物語っていた

立ち並ぶビルの窓はすべて割れ、その下には無数のガラス片と血の跡が広がっていた

ここで何があったかを想像するだけで、意識が飛びそうになる


「お父さん……大丈夫かな?」


涙ぐみながら、喉から絞り出した沙良の声に、どう声をかけても詭弁にしかならない気がして上手く言葉を見つけられない

それでも、最終エゴになる言葉だとしても……私は言わずにはいられない


「きっと、だいじょ……」

「そんな心配するよりさ、さっさと周辺に避難所出来てるか探しに行こう」


私の言葉を遮って、沙良の隣りにいた泉くんは冷静に言葉を放った

驚いて泉くんの方を見てみると、彼はとても優しい表情で沙良に「な?」と言っている


そうか、きっとこの2人……


野暮な事はするもんじゃないか

そう思って、私は「んじゃ!皆で探しに行こう!!」と言って凌の手を取って、沙良から身を離させる

若干だが2人の世界を作ったと、自己満足に思いながら私は笑った


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