緋色の奇跡
そう、私たちは何も悪くなかった

私たちはただ、信号の通りに道に出ただけだった

それなのに、それは一瞬の出来事

あっという間に、私たちの生活を、達杞ちゃんの人生を壊していった

覚えているのは、達杞ちゃんの「危ない!!」という声と、車のブレーキ音

そうして………体に残る達杞ちゃんの手の感触

達杞ちゃんに押された、その手の感触

突き飛ばされて、そのままこけた私は、痛みに眉をひそめながら顔を上げた

白昼の出来事に、近くにいた人々がぞろぞろ集まってくる


「君大丈夫かい??」


何が起きたのか整理の出来ていない私の耳に届いたのは、心配して近づいてきてくれたサラリーマンのおじさんだった

その言葉に「大丈夫」と言いかけて、私は達杞ちゃんと歩いていたんだという事を思い出す

隣にいたはずの達杞ちゃんの姿が、今はない


達杞ちゃんはどこに??


不安に辺りを見渡すと、達杞ちゃんは私から数メートル離れた場所に横たわっていた


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