緋色の奇跡
その「黒」という言葉に体を少し強張らせていると、私は近づいてきたお医者さんの気配に気がついた


「また来た!!患者さんですね!!」


顔を上げて目が合ったそのお医者さんはこちらに気がついて、近寄ってきた

やって来たのは、とても綺麗な女医さん

忙しそうに私たちのもとにやってくると、彼女は素早くトリアージをしていく


「あら、綺麗な応急処置……これなら緑か黄で良いわね」


そう言いながら、彼女はトリアージの札を切ろうとした


「あ、待って……」


突然声をかけられて、彼女は驚いたように私を見つめ返した

首をかしげてこちらを見つめている彼女に、私は一瞬言葉に窮してしまう


「なぁに?」


優しく笑ったその顔に導かれて、私は言いかけた言葉を口にした


「あの……そのアザ、もしかしてクラッシュ症候群の可能性とかあるかと思って………」


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