緋色の奇跡
お父さんとお母さんは、ずっと達杞ちゃんに後を継いでほしいと思っていたはず……

達杞ちゃんもそれに応えるように、医学部に進んでいたし、それはもうほとんど決定事項だった……

けど……


けど私がそれを壊した―――


私があの日達杞ちゃんと出掛けなければ

私があの日どうにか出来ていたら


達杞ちゃんは死ななくて済んだんだ

きっと達杞ちゃんは私を許さないね

お父さんもお母さんも、あの日以降私を見ようともしない

2人も私をきっと許していなんだよね

だから、あの時達杞ちゃんの声が聴こえたのは、達杞ちゃんが私に思い出を風化させていかせない為の言葉だったのだろう


彼女を助けなさい


命令口調のその言葉は、彼女が私に緋色の世界から逃げないように縛っていったのね

だから私は、何が何でも助け続けなきゃいけないんだよね


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