緋色の奇跡
彼女の問いに私は言葉に詰まった

電話はしていない

しようともしていない

正直怖かったから……

メッセージも何も残っていないだろう番号にかけるのが怖かったから

静寂を破ったのは沙良の声だった


「瑞杞~!!」


声のした方を振り返ると、彼女は少し怒った感じ、でも安心も混じった顔で私に抱きついた


「突然消えるから心配するじゃん!しかも一条くんまでいなくなるし……」


そこからは声のトーンを落として私の耳元で「駆け落ちかと思った」と言って、彼女はニヤッと私に笑いかけた


「ごめんごめん、ってか最後のはあり得ないから!」


謝りつつツッコミを入れていると、後ろから凌と泉くんが合流する

そんな私たちを見て、木之下さんは「それじゃあ仕事に戻るわ」と言って立ち上がった


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