緋色の奇跡
立ちあがった彼女に軽く会釈すると、彼女は私の方にスッと寄って静かに言葉を付け加えた


「まだ躊躇があるなら無理強いはしないけれど、出来れば早い段階で電話にメッセージ入れてあげてね」


そう言って彼女は私に笑いかけると「気をつけて帰ってね~」と言いながら手をひらひらと振って去っていった


「で?さっき運んだ女の人どうなったわけ?」


静かになった院内に最初に響いた声の主は、凌のものだった


「大丈夫だったって」


彼の問いに微笑んで答えると、彼は「そっか」と言って笑い返した


「折角来たけど、避難所に帰っか」


ここにいても特にする事もないので、私たちは泉くんの提案に賛成する

帰り道、泉くんと沙良の後ろ、凌の隣を歩きながら、私はケータイを取り出した

ジーっと数秒それを見つめてから、私はやっぱり決心がつかずバッグに再びそれを直した


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