緋色の奇跡
「オヤジやお袋の事も心配だけど……」


彼はそう言ってから、チラッと隣に座る沙良を見た

その視線に沙良は顔を赤くして、うつむいた

何だろう……この中学生日記のようなワンシーンは……

苦笑しながら、可愛そうなのであまり弄らないでおいておく


「凌はどうするよ?」


私がそう凌に尋ねると、彼はニッと笑ってから「そんなの決まってんじゃん」と口を開いた


「瑞杞1人じゃ、家までたどり着かねーだろ。俺がついてってやるよ」

「そりゃどーも」


素直に「ありがとう」と言えばいいのに、全く可愛げがないったらありゃしない

本当に、私は彼にちゃんと気持ちを伝えられるのだろうかと頭が痛くなる


「あとは、泉の父ちゃんと母ちゃんにもお前の安否は伝えといてやるよ」


再びニッと笑う彼の横顔を見つめながら、私は胸の奥がキュンとなって苦しかった


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