緋色の奇跡
そんな笑顔をされれば、私はもう何も言えなくなってしまう

しょうがなく諦めて、スッと彼から身を離そうとした瞬間、突然私は再び彼に引っ張られていた


「!?」


わけも分からず声をあげそうになったところを、彼の手で阻止される


「だから、静かに!見つかっちゃうって。静ちゃんこっち来てる」


近すぎる距離に、私の心音が彼の耳に、肌に伝わってしまいそう

そう思うと、更に強く打つ胸の鼓動

背後に足音が聞こえて、私の胸はドクンと大きく鼓動を刻んだ

かくれんぼで見つかるのは良いが、この状況、この体勢であまり見つかりたくないものだ

そう思っていると、その足音の向こう

もっと後ろの方で軽快な音が鳴り響いた

カラーンという音と共に「よっしゃー!」と言う健人くんの声

どうやら彼がカンを蹴ったようだ


「あ~!!!蹴られちゃった!!また私がおにぃ!?」


イヤそうに静ちゃんは叫ぶと、足音を立てて私たちから遠ざかって行った


「次は俺と別のとこに隠れろよ」


そう言うと、彼はサッサと私から離れると、違う所に隠れるべく走り去って行った

静ちゃんがゆっくり数を数える声を聴きながら、私はようやく胸の鼓動がおさまってホッと一息をついた


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