緋色の奇跡
事情が理解できず、未だクエスチョンマークが飛び交っている私たちに、彼女は核心部分に触れた


「奈緒ちゃんの両親は、見つかっていないんです。静ちゃんと健人くん関しては……」


ここにきて、私たちはようやく震災の結果の一部を見た気がした

私たちが今まで見て来たのは、陽の部分だ

沙良のお父さんもお母さんも無事でいた

まだ安否の確認できていない、凌の両親だって、泉くんの両親だって、私は頭のどこかで勝手に無事であると思っていた

そうして私の両親も………

2人残されて、私たちは近くにあったベンチに腰かけた


「あの子たち、あの事知らないんだな」


静かな空間に凌の声だけが小さく響いた


「ん。知らせてないって言ってなね」


彼の言葉に同調しながら、私は暗くなり始めた空を見上げた


< 88 / 141 >

この作品をシェア

pagetop