緋色の奇跡
「あのさ、今この時に言う事じゃないんだけどさ……」


歯切れ悪くそう言葉を発する凌に、私は首をかしげて彼の方を見た

真剣な表情の彼に、少し胸が高鳴りながら、私は「何?」と尋ねた


「さっき、公園で隠れてた時さ……」


その言葉に、私は忘れていた事を思い出した

不意に感じた彼の体温

彼の吐息

すべての感覚が彼に集中した、公園での出来事がフラッシュバックする


バカっ
別にその事じゃないかもしれないじゃん!!


1人赤くなり始めた顔を隠しながら、彼の次の言葉を待った


「171に電話したんだよ」


その言葉でハタと気づく

彼の両親の無事はまだ確認できていなかったのだから


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