緋色の奇跡
だから怖い

番号を押すだけという行為が、怖いの


「俺と一緒ならかけられる?」


うつむく私にかけられた言葉に、私は意味が理解できずに彼を見つめ返した


「一緒に番号押すくらいなら、やってやれるけど?」


心配そうに見つめるその瞳に吸い込まれそうになる


あぁ、いつの間に彼はこんなに大きくなったのだろう


背の高さとかじゃなくて、もっと内面的な事

私はいつの間にか、こんなに弱い人間になってしまった

だから、ここで彼に頼ってしまってはいけない

頼ってばかりじゃ、きっと私は一生両親と向き合えない


「ううん。自分でかける」


そう言って私はバックからケータイを取り出して、画面を見つめた


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