妄想バレンタイン《短編》
妄想バレンタイン
目覚まし時計がけたたましい音を出した。


布団から腕を伸ばすと、いつもと同じ場所に居座るそいつを乱暴に止めた。


本当は、すでにしっかり、はっきり、ばっちり目が覚めていたが、俺はいつものようにまだ布団の中にいた。


いつものようにしなくてはならない。


少しでも早起きなんてしようものなら…。


「こいつ、もしかして意識してる…?」


なんて思われてしまう。




平常心、平常心。


この期待を、誰にも悟られてはいけないのだ。


「あれ?今日はそんな日だっけ?」


そんなセリフを言い、そんなもの全然興味ないけど…?ってくらいの余裕を見せなくてはならない。


机の上の卓上カレンダーをちらりと見た。



今日は2月14日。バレンタインデーだ。


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