妄想バレンタイン《短編》
階段で妹の麻里とすれ違った。


「お兄ちゃん、おはよう」


「おう、おはよう」


俺はちょっとした違和感を持って麻里を見た。


「なに?」


「いや…なんでもないけど?」


「ふーん、変なの。キモい」


麻里はそう言い捨てると、自分の部屋に入っていった。



ふふ…。


麻里の奴、バレバレだぞ。


バレンタインデーを意識してるのが…。


学校に行くのにそんなにオシャレして。


誰かに渡すのかな?


麻里が誰かにチョコレートを渡すということは、当たり前だけどそれを貰える男がいるってことで。


ちょっと、羨ましく思ってしまった。


おっと、いけない。


素知らぬ顔をして、兄の威厳を保たねば。
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