60億人の自分

4人目

「戦争をしている並行世界の自分」より

出兵、出兵、出兵、息が止まる暇もなく
戦い続けている。
強制的に起こる戦い、強制的な環境。
それは、他の世界でも同じかもしれない。
でも、私は、目の前に直面しているのである。
遠ざかった地平線の上にある軍艦に私は搭乗している。
飛行機、いや、戦闘機の轟音がありふれていて、
コオロギ一つ鳴かない。
暗い空気だ。暗い。どういう戦争だと疑問に持っている
ことだろう。しかし、戦争とは理不尽で説明がつかないものさ。
君たちに表現できるのは、これくらいしかなかったのだ。
並行世界の自分よ。戦争に参加していないのなら、それを
不幸と思わないことだ。

手紙を確かに受け取ったと、書ける
インクが残り少ないようだ。
ペンの補充も足りない。

だから、これくらいしか言えない。

「手紙を、ありがとう」


どこかの並行世界にいる自分へ
< 5 / 52 >

この作品をシェア

pagetop