執事と羊
「これで、よろしいでしょうかね?」
甘い痛みの正体は何なのか
あたしは知らないでいた。
ただ、あの場にいては自分が
危険だと思い猛ダッシュで
自分の部屋へと戻った
ドクドクとあたしの全身の血が
体温をあげて、今にも蒸発していきそうなくらい
心臓が速く動いている。
こんなの、味わったことのないこと。
男性に言い寄られることはあっても
あんなことされたのは初めて
執事のくせに......
今のあたしにはそれしか言えなかった
考えることも、出来ない
思いだしたくもない
なのに、宝井さんの声が
一音一音鮮明に覚えている
あたしの中で何回も
流れては...のくり返し......
あたし、どうかしている。
きっとこれは悪い夢。
そうよ、これは夢
あたしはベットにもたれて
そのまま寝てしまった。