ほんのあいだ
私、高橋佐和はごく平凡な人間である。

何のドラマチックな展開もなく学生生活を終え、本と静かな場所が大好きだから図書館に勤めている。

一穂はあまり好きでないというが、私は図書館の受付業務が好きだ。

来館者は多くの本の中から自分の読みたい本を持って受付へやってくる。私はそれを受け取ってバーコードを読み取り、返却日を記入した紙を挟んで、にっこり笑って本を渡す。

この作業を、私はすごく神聖なものに感じるのだ。

だって、その人の内面に触れるような気がするから。

暇つぶしのためだったり、とりあえず話題の本を読んでみるだけだったり、課題で読むように言われただけだったりすることもあるだろうが、来館者は自分の興味のある本を借りていくものだと思う。

だから頻繁に訪れる人だと、その人がどの分野に興味を持つ人なのか分かってくる。

私が彼に惹かれたのは、彼の持ってくる本に自分も興味があったからだ。

もちろん、その容姿も心惹かれる要素ではあったが・・・
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