精神安定剤
その号の雑誌の売れ行きは、ここ三ヶ月で最高の売れ行きだった。



そして、この雑誌をきっかけに、他の週刊誌やスポーツ新聞、ワイドショーなどで、誤認逮捕などを取り上げられる騒ぎになった。
 



明海は、今回の件で今まで積み上げてきた、信用をいっきに失った。



そして、当分の間、


「おとなしくしてろ。」


と上から言われ、大きな事件は担当をさせてもらえなくなった。




この時、しみじみもし男だったら、こんなにも信用を失うことは無かったかもしれないと、初めて女であることが嫌になった。




仕事で信用を失ったことで落ち込んでいる明海の唯一の支えは、上司で彼氏である、木村の存在だったが、最近、そんな支えである木村との関係もギクシャクしていた。




木村には、明海が大きな事件を担当させてもらえなくなってから、三日後、いつも二人で会っているホテルで、いつものようにご飯を食べ、部屋に行ったその部屋で明海は、木村に、
 


「もう俺たち、終わりにしよう。」


と言われた。
 



「どうして?今回私が、事件をミスしたから?」
 



「今回のことは関係ない。


少し前から考えてたんだ。


奥さんが、どうも最近、俺が浮気してるんじゃないかって、気付き始めたんだ。


だから今日で、最後にしよう。」
 



それだけ言うと、木村は明海が引きとめようとする言葉を背に、一度も振り向かずに部屋を出て行ってしまった。
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