精神安定剤
 明海が家を出た頃、明海の家の前で張り込んでいた加賀屋は、明海の後を付けていた。
 


 昼間、なんだか、すごく落ち着かない様子の明海の姿を見て、加賀屋は、夜勤を無理やり交代してもらえるように頼んだ。
 


  「もしかしたら、また事件はおきるかもしれないので、いつでも現場に行けるようにしていて下さい。」
 


  「おまえ、何か知っているのか?知っているなら、話せ。」
 


 加賀屋は誰にも、明海のことは言うつもり無かった。



 明海を守りたいと思った。


 
 しかし、これ以上、事件はおきてほしくない。



 そんな事をいろいろ考え、葛藤している、加賀屋に対し、今の会話を傍で聞いていた、木村が、声をかけてきた。
 


  「何を隠しているんだ?これ以上、被害者が出てはいけないんだ。わかるだろ?」
 


 そんな木村の言葉に、加賀屋は、救いを求めたくなり、今までの自分が感じていた明海への疑い、そして、今日何かが起こりそうな胸騒ぎがすることを話し始めた。
 


  「本間さんが、事件に関係しているのなら、そこから救いたい。


   もう、事件はおきてはいけないと僕も思っています。


   だから、僕に本間さんを尾行させてください。」
 


 加賀屋の必死の願いに、木村は、例え事件は起きなくても、加賀屋の意見を受け入れてみよう。



 事件が、再び起きるよりは、いいだろうという考えになった。
 


  「加賀屋、今から急いで佐野と一緒に、本間を追いかけろ。


   動きがあったら、随時こっちに連絡入れることを忘れるなよ。」
 


  「ありがとうございます。


   事件が起きないことを願っていてください。」
 


  「余計なことはいい、さっさと行って来い。」
 


 そんな木村の言葉を聞くと、加賀屋と佐野は急いで、明海の後を追いかけた。



 明海が署から出て、少し時間が経っていたので、見つけだすのに時間がかかると思ったが、明海の姿を確認するまでに、さほど時間がかからなかった。



 明海は、家の近くのコンビニで買い物をしていたのだ。
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