初恋
初恋
 私は告白された。夕焼けでオレンジ色に染まった教室はとても綺麗だった。


 私に告白した男子は隣のクラスの山田君。サッカー部のエースらしい。私は山田君の事をよくしらない。でも、女子に人気があるのはなんとなくわかるかな。前髪がさっぱりしてて、顔のバランスが整ってる。妙にさわやかでマイナスイメージを捜し当てる方が一苦労。私は苦笑いを浮かべて、山田君の顔を見つめた。


「ダメかな?」


 山田君が照れ臭そうに頭を掻く。期待半分、不安半分って感じの表情で、私と教室の床を交互に見てる。白いワイシャツの襟が汗を吸い込んで変色してた。私は、悪いことしちゃんたな、と思った。何だか返事を返しにくい。


「別に今すぐってわけじゃないんだ。考えといてよ」

 山田くんは重苦しい雰囲気に呑まれたみたいで、声を裏返して喋った。


「ごめんね。明日、お返事返すから」


「謝んなくていいよ。俺がいきなり言いだしたんだからさ。あとさ、携帯番号なんだけど、一応、交換できる?」


 私はちょっと迷った。


「友達からでもいいんだ。嫌いになったら携帯番号のメモリー消してもいいしさ」と山田くんは言った。


「うん、ならいいよ」


 私はポケットから携帯電話を取り出した。山田くんは慌ててる。何度も携帯のボタンを押し間違えて、ごめんちょっと待って、と言って頭を描いた。漸く赤外線通信で番号を交換すると山田くんは愛想笑いをしてから、じゃあ、また明日ね、と言って足早に教室から出ていった。


 一人になった私は自分の机に座った。窓際の席で目の前にガラスがある。私の顔が映った。曇った表情をしててちっとも嬉しそうじゃない。


――恋愛ドラマの可愛い女主人公が、二人の男性に板挟みに合って、こんな顔してたな――


 私はそう思ってため息をついた。黄昏るってこういう事をいうのかなって、私は思った。


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