初恋
「ちょっと嫌な事があって」


「何なのさ、悩みがあるなら聞くよ」


「明日の朝……話すね」


「大丈夫かい?」


「うん、大丈夫」


「じゃあ明日、桜山神社で」


「うん、お休みなさい……」


 私は携帯の通話を切った。そして、テーブルに置いた。私はなんて最低な女なんだろうって思った。お父さんの事もあるけど、山田くんに嘘をついたのが一番最低だと思う。私はたぶん桜山神社に行かない、ううん、行けない。そんな気がする。すると、大粒の涙が溢れた。どんどん流れてくる。私は嘘つきだ。


 私は手の平で涙を拭った。そして、手のひらを見た。頬についていたお父さん血と私の涙が混ざり合って、見たこともない色になっていた。


 恋愛ドラマの甘ったるい台詞がテレビのスピーカーから流れる。



『ごめんなさい。好きよ、大好きよ』


 テレビ画面を観ると、不仲だった男女が抱き合ってキスをしていた。男性が『気にするなよ』と言っていた。


「ごめんなさい……」


 私は謝った。誰からも謝罪の返答は得られなかった。






終わり


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