初恋
 私はまた怒鳴ってテーブルを叩いた。手がジーンとする。手の痛みより体の中のチクチクした痛みの方が、私には辛かった。痛いよ。苦しいよ。私は悲鳴をあげてるんだ。お父さん助けてって。お父さんは頭を抱えて「お前は勘違いしている」と言った。


「私はお前が好きだ、愛している。だが、それは恋愛対象としてではない。家族として、娘として、かけがのないものだと思ってる」


「じゃあ、私の事を女だと思ってないの?」


 我慢していた涙が流れた。今まで炊事洗濯をしていたのは、母より立派な女になって、お父さんに好かれたかったから。趣味でやってたんじゃない。私が信じていたものが崩れかけてる。お父さんと私の信頼関係、父と娘の距離、片思いであり続けるための理性、誰か崩落を止めて。私の力じゃあ無理。


「そういう意味じゃない。お前は女性として魅力的だ。顔も可愛いし、スタイルもいい。あ〜娘に何言ってんだ。とにかく、私とお前は親子だ。血が繋がってるんだ」


 お父さんも混乱しているようだった。頻りに頭を振って考えてる。


「わかってる。でも、お父さんの事を考えてると頭が変になるの。ぼんやりして、体がムズムズしてきて、我慢が出来なくなるの」


 私は立ち上がった。涙でうまく喋れない。鼻水がたまって、何回も鼻を啜った。お父さんが頭の中がぐるぐるしてちゃんと動いてくれない。悪い事ばかり考えて、悪い結果ばかり頭に浮かぶ。


「無理だ、諦めろ」


 お父さんが下を向いた。お手上げといった様子だった。でも諦めきれなかった。もう止まらない。


 私はエプロンを外して、制服の上着、ワイシャツ、Tシャツを脱いだ。お父さんが「おい」と言って止めようとしたけど、私は振り切って、ブラジャーも外した。


「ねぇ、見てよ。胸だってこんなに大きくなったんだよ。私はもう女、大人の女なの。子供だって作れる。私はガキじゃない」


 私は自分の胸を見せて、お父さんに迫った。お父さんは視線を逸らして、私を見ようとしない。私はウッウッって声を出し始めた。すごく息苦しい。


「お父さんな、少し気になる人がいるんだ。会社の後輩だ」

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