ネットワークライダー『ザイン』
鴻上は舞台俳優のようにわざとらしく大見得を切って返した。
「ご名答! その推察力が巨万の富を生み出す訳ですな。
さぁ、そろそろ90秒です。命のパターンを読み終わる頃合いですよ」
ピィィィィィッ
画面に『読み込み終了』と表示され、彼はそのデータを保存した。
「これで準備完了です。転送してみますか?」
「ああ。頼む」
「このアイコンをクリックすると15秒後に転送を開始します」
シュィィイン……フッ
「! 消えた! 消えたぞ」
「正確には『転送された』です。よっ……と」
CDロムの読み込み時に出されるモーター音に似た音と共に猫は消え、もう一度鴻上が画面をクリックして暫くすると、すっかり項垂れた猫が現れた。
フゴッ ナゴッ
猫はヨタヨタと崩れるように横たわってしまった。
「なんだか具合が悪そうじゃないか。本当に大丈夫なのか?」
「ははっ、心配ないですよ。これは車酔いのようなもので……ネット酔いとでも言いましょうか、わたくしも酷い頭痛に襲われました。
にゃん子には可哀想ですが、なぁに。すぐ元に戻りますよ」
胸元に抱き上げた子猫の頭を撫でながら鴻上が言う。
「転送に不快感が伴うんじゃ、実用化はまだまだ先の話だな」
「主たる工業国には押並(オシナ)べて特許申請を出してあります。あとは瀬戸さんから貰ったお金で登録すれば、じきにわたくしの時代がくるでしょう」
くくくっと鴻上は笑うと瀬戸に向き直る。
「操作は簡単なアプリケーションに移してありますし、説明書に詳しく書いてあるのですが念のため。ご質問は有りますか?」
「いや、無い。ではこの売買契約書にサインをくれ」
テーブルに紙を投げると瀬戸は取扱い説明書に目を通し始めた。
「はい、サインしました。ではわたくしはここらへんで失礼します。ああ、ネットワーク内ではバイクのような物で移動するようプログラミングしておきました」
画面のサムネイル画像をクリックすると表示されたバイクは、アニメにでも出てきそうな代物だった。
「なんだ、随分カッコイイじゃないか。あんたはデザインにも造詣が深いんだな」
思いもよらない瀬戸からの誉め言葉に面喰らったのか、よほどその場から早く立ち去りたいのか、鴻上は居心地悪そうに身体を捩っている。
「いや、大学のサークルで工業デザインをやってましてね。ヒーロー物は嫌いじゃないんで……」