ペネトレイト・エンジェル
 ライフルのエネルギーパックを二つ残した時点で、ムツキはブレードで切り込もうとした。


 他の機体の中には、すでに突撃をかけている者もいた、無謀にもキングに特効をかけて人形のように蹂躙されている機体もあった。

 北欧神話の『狂戦士』の名を持つベルセルガが、その名のごとく手持ちの斧で次々にポーンを斬ってゆく。

 機体ナンバー『25』のベルセルガはヘイヤード中尉の機体だ。

『ベルセルガ部隊はキングに砲撃を集中させろ!、ペルセウスA中隊はビショップタイプを引き付け、B中隊はガウェイン隊の援護だ!!、テメェらぁ!、根性みせろぁらぁ!!!』

 ヘイヤードの命令と激が飛ぶ。

 戦況的には分が悪かった、なによりキングに対する『決め手』が無い。

(…えーい、クソッ!せめて『ヴァジュラ』がありゃあな)

 インド神話の神、インドラの武器の名を持つ『ヴァジュラ』は大型の可電粒子砲だ。


 しかし、ヴァジュラは大電量を使用する兵器のため、とても前線で運用できる代物ではなかった。

 ヘイヤードは、いざとなれば部隊全機で特攻をかける覚悟をしていた…。

 その時…、部隊全機に女性の声で通信が入った。

『大隊、聞こえるか!?、こちらの指示するラインまで下がれ!!』
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