ペネトレイト・エンジェル
 …アーサーと別れて三分後、ムツキは司令官室の前に居た。


(う…、緊張する)

 基地司令官である「ユリゲート・タカシマ少将」とは、直接顔を合わせた事は無い。


 モニター越しか、遠目で見るくらいの存在だ。

 だが、いつまでもドアの前で立っている訳にもいかず、意を決してインターホンを押した。

 ビー〜〜〜

「ムツキ・ハバノ軍曹、参りました!」

『入りたまえ』

 インターホンからタカシマ司令の低い声が返ってくる。


 ムツキはドアの開閉ボタンを押し、中に入った。

「失礼します!、ムツキ・ハバノ軍曹、参りました!」


 ムツキは直立不動に右手で敬礼をすると、声を張り上げた。

 目の前にタカシマ少将、しかし、それ以上にムツキの目を引く存在が部屋に居た。

(銀…髪…?)

 腰近くまである、長い銀髪の女性士官がムツキに背を向けたまま立っている。

 だが、ムツキの目はタカシマ少将の方に向いたままだ。

 『銀髪の女性士官』は確かに気になるが、今自分が司令官室に居る事を忘れる程馬鹿ではない。


「結構、休みたまえ」

「ハッ!」

 ムツキは足を開き、両手を腰の後ろで組んだ。
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