からんころん
あの時のことは覚えていない。気がついた時にはもう、誰もいなかった。
でも…きっと俺は勝ったんだ。
「は…ははは、ははは、はーっはっはっはっ!やった、勝った、勝ったぞー!!」
気持ち良かった。世界は俺のものってくらいすがすがしかった。
けど…我に返った瞬間、また恐怖が襲ってきた。
鏡にうつるひ弱な自分…。
「おぅ谷塚。昨日はよくも…」
「あ?」
恐怖を打ち消すために、俺はツッパリだした。
身なりも、威圧感を与えるため制服のシャツではなく黒いTシャツを着て…
その時から俺の黒づくめの生活が始まった。
集団は最初、悪ぶってる俺を笑ってただけだったけど、そのうち俺から離れてくれた。
こうしてさえいれば何も恐くない、敵は襲ってこない、
そう思い込んだ俺は、以来ずっと黒を身に纏ってたんだ。
悪ぶることはしなくなっても黒だけはずっと…
「この間、偶然集団の1人と再会したんだ。びっくりしたよ、千夏の学校の職員だってさ…」
ー「あれ?おまえ…谷塚?」
振り向くとそいつはニヤニヤして俺を全身見回した。