からんころん
「はは、進歩ねえやつ」
そいつは、それだけ言って立ち去った。
「何も言い返せなかった俺は…あいつの言う通りじゃねぇかって悔しくて、ここんとこ黒やめるようにしてたんだ」
「違います!」
「み、実果子ちゃん…?」
実果子は急に怒り出した。
「その人の言う通りなんかじゃありません!お兄さんを蔑むその人の方がよっぽど進歩ないです!」
「実果子ちゃん…」
「私…、私もなんか悔しい…!」
怒りまかせにそばをすすった実果子は
「ケホッ、ケホ、ケホ……」
むせた。
「大丈夫…?」
「グフ…、なんとか……」
「ふっ…ははは…」
「…笑うとこじゃないですっ」
「ごめんごめん、だって実果子ちゃん、まるで自分のことのようにムキになるから…」
「だって、私…お兄さんの気持ちわかるもん…」
「あの…」
そこへそば職人見習いの若がやってきた。
「すみません、もう閉店なんですよ」
「えっもうそんな時間!?本当だ、全然気づかなかったな。…もうちょっとだから食べ終わっていい?」