からんころん
罠
それは、晴紀も同じだった。
「てゆーか、なんで高田くんまでいるわけ?」
「うっせぇな。いいだろ!」
ある日、無性にそばを食べたくなった実果子は、ひとりでいつものそば屋へ行った。
「こんばんは」
「いらっしゃいませー」
お店として、従業員が普通に迎え入れてくれたけれど、おばあちゃんの声は聞こえなかった。
居ないのかと思ったら、奥に姿が見えた。
「何にします?」
「あ、きつねそばお願いします」
「はいよ」
「あの、おばあちゃん…お元気ですか?」
「元気ですよ。なんで?」
「や…ちょっと気になって…、なんでもないです!」
いつもはおばあちゃんが注文を聞きにくるけれど、この日実果子のところには若がきた。
配膳も、会計も若がして、とうとう実果子はおばあちゃんと話すこともなく…
「ありがとうございましたー」
「ごちそうさまでした…」
実果子はおばあちゃんをチラチラ見ていたけれど、おばあちゃんは実果子を見ることもなかった。