からんころん
他のお客にはちゃんと接していた。
若の言うとおり、元気はある。
そんなに広くない店内…気づかないわけない。
ここのところ、実果子への対応が著しくおかしかった。
ーー私、何か悪いことしたのかな…?
実果子は考え込む。
「あの」
通りすがりの男性が声をかけてきた。
「この近くにコンビニありますか?」
「あ、はい。そこを右に曲がって…」
「え、どっちどっち?」
「そこを…」
「え?」
なかなか理解してくれないので、実果子は曲がり角まで案内した。
「ここからはまっすぐだから」
「お、ありがと」
男性はさっさと去っていった。
実果子は恐怖と疲れがどっときた。
「…早く帰ろ。…あれ!?」
実果子のショルダーバッグの中身がものけのからになっていた。
さっきの男はスリだった。
「ど…どうしよう……」
実果子はパニックになり、再びそば屋へ駆け込んだ。
「おばあ……」
「いらっ…あれ?忘れ物っすか?」
「いえ、あの、そこで私スリにあって…」