からんころん
「私じゃなくて!さゆりちゃんが持って行ってって言うから。あはー、愛されてるねぇお兄ちゃん!」
晴紀は大きなため息をつく。
「ほぉーらっ!じゃあよ~く味わって食べなよ。私は実果子ちゃんとパスタ食べてくる。行こっ実果子ちゃん」
相変わらず千夏のぺースにはめられる晴紀と実果子。
「世話のやける兄貴」
「…千夏ちゃん、お兄さんのお見合い応援してるんだね」
「もちろん!あんな良い人いないもん。お兄ちゃん奥手だから周りがなんとかしないと一生独身だよ?」
そこに晴紀の気持ちや権利はもはやなかった。
実果子は晴紀が乗り気じゃないことを知っていたから…晴紀のことが少し気の毒に思えた。
「そんなことより実果子ちゃん!お願いしたいことがあるんだけど…」
千夏が実果子をすがるような目で見てきて、実果子は思わず喜んでしまう。
「何!?」
その頃晴紀はひとり、寒空の下さゆりの弁当をつついている。
「あ、おーい!こっちこっち~」
バイトを終えた誠也がやってきた。