からんころん
晴紀は近づいて、後ろから千夏にマフラーを巻いた。
「きゃあっちかんっ!!」
「ばっ…俺だよ!」
「あ?」
「…こんな時間にどこに行くんですか、お嬢さん」
「お兄ちゃんには関係な~い」
「…おい、風邪ひくぞ」
「私のことはほっといて~」
鼻歌調に言い、また歩き出す千夏。
晴紀は千夏の腕をひき、
「帰るぞ!」
「もう、なによぉ?」
ふにゃふにゃしている千夏を車に乗せた。
「何考えてんだよ?おまえ…」
「なーんも考えてないよぅ。アタマを無にして歩きたい時もあんのよ、おにーちゃん!」
「…おまえ何か飲んだ?」
「飲んでなーい…喉カラカラ…」
千夏から、若干アルコールの臭いがした。
「まったく…」
晴紀は自販機を探す。
「あったあった。水飲むだろ……」
横を見ると、千夏はぐっすり眠っていた。
「大丈夫。ちょっと道に迷ったみたいでさ。……うん。それが疲れて眠っちゃって。今夜はうちであずかるよ。……うん。もう安心して寝て。……はーい」