からんころん
「なんとか…、よいしょっと」
「はは、よいしょって、おばさんか?」
「…どうせ私はみんなより歳いってますよ!」
「とにかくどっか雨宿りしよ。…あそこで待ってて。車止めてくるから」
言われるがまま、晴紀が指差すそば屋へ実果子は駆け込んだ。
「いらっしゃい。あらぁびしょ濡れだねぇ」
本当は入るのが恥ずかしかったけれど…
そば屋のおばあちゃんはすぐさまタオルを貸してくれた。
「寒くないか?お茶あったかいのにしといたよ」
「あ、ありがとうございます」
今の実果子には涙が出るくらい嬉しい、人の心遣いだった。
「こんばんはー」
「あら、晴紀ちゃん、あなたもびしょ濡れね。はいタオル」
「ありがとう。ばあちゃん、いつもの2つね」
「はいよー」
「あとドライヤー貸してね」
「はいよー。洗面所にあるからねー」
晴紀はおばあちゃんと親しげに話している。
よく来るみたいだ。
「実果子ちゃん、おいで」
「はい。…?」