からんころん
「あ…私が勝手に心配したんだから千夏ちゃんは謝んなくていいんだよ!」
「実果子ちゃん、髪の色落ちちゃったねぇ!気に入らないならそう言やぁいいのに」
「いや、あの…」
「俺が強引にやったんだ。あの色はあんまりだろ」
「お兄ちゃんに実果子ちゃんの髪どうこう言う権利あるの?あーあ。なんか自信なくした。目標変えようっかな」
「千夏ちゃん…!」
「その方が良いかもな。これくらいのことで投げるようじゃやってけねぇぞ」
「お兄さん!」
これまで見たことのない兄妹の険悪なムードだった。
「……帰る!」
千夏は実果子をすり抜けて走り去った。
「千夏ちゃん待って!」
「ほっとけ!」
晴紀の声は聞こえたけれど、実果子は千夏のあとを追いかけた。
全速力で走る千夏に実果子が追いついたのは、およそ5キロ先の赤信号…
「千夏ちゃんて…あ…足も速いんだね…はぁ、はぁ…」
「はぁ、はぁ、もうやだ…。実果子ちゃん…犯人追っかけるみたいにっ…」