からんころん
満面の笑みで手をふる千夏に、実果子もつられて手をふったけど…
「なんか違う気がするけど…。ま…いっか。つつつ…私も足痛い…私もタクシー…」
実果子は財布を覗く。
「……ぼちぼち歩くか」
中身は心細かった。
ゆっくり歩く帰り道…
途中公園のすべり台の周りで子供たちがざわめいていた。
実果子は気になり、近づいてみた。
「…どうしたの?」
「すべれないんだ」
「ええ?」
見るとそこには男が横たわっていた。
顔は帽子で覆い、小さないびきも聞こえる。
眠っているようだ。
「おねーちゃん起こしてよ」
「私が!?ちょっとそれは無理…かな……」
「えーなんでぇ?」
「おねーちゃん大人だから恐くないでしょ!」
「そ、そんなこと言ったって…」
無茶苦茶言う子供たちに実果子は困り果てた。
もしかしたら凶悪犯かもしれないし…
起こしたら何かされるかもしれない…!
と、よからぬことばかり頭をよぎり、恐くて仕方なかった。
こんなところに立ち寄らなきゃよかったと後悔した。