からんころん
「ここ…どこ!?」
「かからん山の展望所だよ。知らねえの?」
「し、知ってるけど…目ぇつぶってたからわかんなかった。てっきりうちに着いたかと…」
「俺あんたんち知らねぇもん。あー、坂がキツかった~。あんた重いし」
と言いながら気持ち良さそうに背伸びする誠也。
「…なんでここに?」
「俺が来たかったからだよ」
「勝手だねぇ…」
呆れ笑いする実果子。
けれど見晴らしの良さに、実果子もすがすがしい気分になっていた。
「はぁ~あ。まぁ座れ。足痛ぇんだろ」
「うん…」
それから2人は何も喋らすに、ただ座って景色を眺めて過ごした。
「…帰るか」
「え、もう!?」
「もうって、結構いただろ?ほら」
時計を見ると、もう昼前だった。
「本当だ。全然わかんなかった。ただ座ってただけなのにねぇ」
「時間も忘れるくらい俺と一緒にいて心地良かったって?」
「ちがっ…け、景色が気持ちよかったからよ!」
「そんなムキになって否定しなくてもいいだろ!」
「ムキになんかなってないもん!」
「あーあ。せっかくリフレッシュできたのに台無しだ。次は夜来ようぜ!夜景が綺麗なんだ」
「う…うん」
誠也とはいつも喧嘩腰になるけど、どこか心地良さを感じている実果子だった。