からんころん
「あああ~…」
向こうから母が泣き叫ぶ声が聞こえてくる。
「…金は俺の出してなんとかごまかす。けど千夏、ちゃんと話してくれ!」
荒れた母を見たくないというのと、母に心配をさせたくないという晴紀の突発的な判断だった。
「はぁ…」
「…うるせえな、ため息ばっかつくな!」
「ついてないよ、ため息なんか」
「ついてる!ずっと!…あー腹減ってきた。おまえ何か作れ」
「やだ。そんな時間あったらテスト見直さないと」
「なんだよ…。自分でするからいいよーだ」
台所へ向かう誠也。
ーカタッ、カターン、カタカタカタ…
「…………」
音が気になった実果子は、台所を覗いてみた。
「…何してんの?」
「…み、店屋ごっこ?いらっしゃっせー、おねいさん!はは、はは…」
鍋や食器や食材を一面に広げて、誠也は苦笑していた。
ートントントン…
「ほぉ~…うまいな、おまえ。いやぁ俺こっち方面全然だめでさ!それにしても黒いまな板ってあんだな!」
結局実果子が作ることになった。
「あんたも口より手ぇ動かしなさいよ!こんなに散らかして」