からんころん
「もぉ!横ビルのカラオケボックスだよ。オヤジと援交だよ。あーあ、今からそれ金にするんだったのに…」
千夏の姿はすでに見えず、誠也と実果子は横ビルへ急いだ。
「…あいつらバカップルか?」
千夏は横ビルの前でひとり立っていた。
「待ってんだな?くそじじぃを…」
「待って誠也くん!」
「なんだよっ!とめないとあいつ…」
「少し様子見よう?」
「……そうだな。証拠つかまねぇとな」
今行っても逆上するだけだと考えた。
「…ねぇ」
「なんだ?」
「そろそろ手ぇ…離してよ」
「え?」
誠也はずっと実果子の手を掴みっぱなしだった。
「悪い、忘れてた」
「忘れる…ってそんなことある!?す、素直に離したくなかったんだって…言やぁいいじゃん」
「はは、柄にもない冗談言って自分で照れんな」
「なっ…」
「あっ、誰か声かけてきた!」
千夏に声をかけてきたのは若い男だった。
「あれか…?」
「あれは…ただのナンパじゃない?」
それから、ただのナンパは数回あった。
「千夏ちゃんてやっぱモテモテ…」
「おっ、あれじゃね?オッサンだ」