からんころん

2人は千夏を引っ張り、別のカラオケボックスに連れ込んだ。


…どちらかというと、実果子も引っ張られた感じだ。





「次あんた歌え」

「えっ、私はいい!下手だし…」

「下手とかどうでもいい。歌えばスッキリするぞ」

「いいってば!」

「歌え!」

「やだってば!」



実果子と誠也はマイクでキャッチボールをしている。



「頑固だな…。じゃおまえ歌え」



次は千夏にマイクが渡った。



「どぉいうつもり?嫌み?こんなとこ連れてきて…」

「おまえ、歌いたかったんだろ。だったらあんなオッサンより俺らを誘えよ」

「バカじゃないの?あんたたち誘ったって…」

「そういえばおまえアイドルみたいなことやってたな!歌えよほら」

「うっさいなぁ、もうほっといて!」



千夏はおしぼりを頬にあてながらポテトをほうばっている。



「…ごめんね、痛む…?」

「…………」

「大袈裟なんだよ。あんなへなちょこ平手打ちで。あーもう時間がもったいねぇ。俺が占領しちゃうからな!」

「私帰るから!あんたの下手な歌なんか聞きたくない」



立ち上がる千夏を、瞬時に誠也は座らせた。



「なによ…!」



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