からんころん

濡れた土がなかなか乾かない梅雨のど真ん中頃…



事件は起きた。







「俺の財布がねえっ!」



帰り際のことだった。
同じ教室の男子、誠也が突然大声をあげた。


クラスメイトは全員引き止められ、犯人探しが始まった。




「正直に言え!これは犯罪だぞ!」

「確かにカバンに入れてたの!?ポケットは!?」

「入れてたよ!ポケットにもねえよ!」

「もう!犯人は早く名乗りなさいよ!バスに乗り遅れるじゃん!」



みんな苛立っていた。




そんな中…



実果子は見てしまった。



千夏が微かに震えているのを…





実果子は、千夏を疑った。





「私もう帰っていい!?私じゃないから!」

「証拠はあるのか!?」

「盗ってないわよ!」

「僕も帰ります!」

「ふざけんな!犯人が名乗り出るまで誰一人ここから出るな!」

「はぁ~?」

「もうっいい加減にしてよねっ!」



教室は騒然とした。




「わ……私です!」



視線が一斉に実果子へ向けられた。




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