からんころん
覗き込まれたことに気づき、実果子は慌てて顔を逸らした。
「…やっ、何すんのよっ!」
男子は、いきなり実果子に頭から飲みかけの水をかけた。
…誰かと思えば、あの誠也だった。
「こうすれば涙か水かわかんねーだろっ」
ぶっきらぼうにそう言って、誠也は空になったボトルを投げ、教室へ行った。
「もう…、ゴミを投げんな!」
誠也のこの行為が、優しさにも思えたのが…
実果子はなんだかしゃくだった。
授業が終わり、ぞくぞく生徒らが出てきた。
実果子はバッグを取りに教室へ戻ろうとした。
「実果ちゃん!」
千夏がバッグを持ってきてくれた。
「どうしたの!?びしょ濡れじゃない」
「ちょっとね…」
「誰かにやられたの?私文句言ってくるよ!」
「なんでもないから!…バッグありがとう」
「ああ、実果ちゃ~ん、さっきは助けてあげられなくてご…」
「千夏ぅ、なんか食べ行こうよー」
横から話しかけられ千夏は強引に連れていかれた。
「あんたまだ居たの?」
「目障りなんだよっ」