からんころん
「い、いらないわよ!マッサージ代なんて…」
「返すんだよ!いつか借りてたやつ」
「……へ?」
「おまえ…本当は盗ってないんだろ」
その瞬間、実果子にずっと絡みついていた糸がふっとほどけていった。
でも…
「なんで……?」
「1ヶ月くらい前かな、俺の財布戻ってきたんだ」
「そう…よかったね!」
「ちょうど犯人が財布を俺のカバンに戻してるとこ見ちまってなぁ、驚いたよ」
「え…」
「誰だと思う?」
「…………」
実果子の脳裏にあの日小刻みに震えていた千夏の姿がよみがえった。
「犯人は…」
「そ、その人、ただ拾っただけかもしれないし!」
「いや、違う。あのおどおどした様子は尋常じゃなかった。普段とは全然…」
「もういいじゃん!ね、戻ってきたんだからよかったじゃん!」
「俺がよくねぇんだよ!」
誠也は声を荒げ、机を拳で叩いた。
「俺は…罪のないおまえにひでぇこと言ったり…たくさん傷つけた」
「私は…私はもう大丈夫だから!これでも昔から色々あってね、嫌がらせなんて慣れっこなんだから。はははー」