からんころん
「高田!何がおかしいんだ?」
「先生、おかしいと思わないんですか?」
「何が」
「こんな初歩的な嫌がらせを見破れないなんて、講師失格ですね」
「なんだと!?」
「あんたみたいな名だけの教育者が将来の人間を駄目にするんですよ」
誠也の言葉にカッとした講師は黒板を叩き、ひびが入った。
「…ほら、そういう態度も。こんな塾辞めてやる。さよおならっ」
誠也は出ていった。
教室中が誠也の言動に騒然となった。
「静かにしろ!授業時間はもう始まってるんだ!」
講師が怒鳴ってもまだざわざわしている。
実果子にも何が起こったのか…頭が真っ白になり、ぼう然と立ち尽くしていた。
講師はそんな実果子を睨みつけていた。
「私……私も辞めます。さようなら…」
実果子も出ていった。
「実果子ちゃんっ…!」
「谷塚、席につけ!」
千夏は追おうとしたが講師に戸口を塞がれた。
そして何事もなかったかのように授業を始めた。