からんころん
なんて言えない。
「あっ…ちょっと止まってください!」
「え?」
突然実果子はそう言い、車から降りた。
誠也が歩いているのが見えたからだ。
実果子は人込みをかきわけ誠也を追った。
…けれどまたもや見失った。
「誰かいたの?」
「私のせいで塾辞めちゃった子がいて…謝りたくって私…」
「…それで実果子ちゃんは責任を感じて辞めた…ってことか」
「……………」
「…あっ!あれやろう!」
「…!?」
何を思ったか晴紀はボーリング場へ車を入れた。
「実果子ちゃんやったことある?」
「ええ、まぁ…」
「俺あんまないんだ。気晴らしにやろ?」
晴紀なりの優しさだった。
「あ~もう、なんでだ!?」
晴紀はガーターばっかりだ。
「投げ方が悪いんですよー」
そう言って実果子は晴紀に身振り手振り教えた。
するとすぐにコツを掴み、見事ピンは全部倒れた。
「うおっすげー!俺初めて!実果子ちゃんのおかげだよ!」
晴紀は子供のように喜んで、ついにはひとりで投げていた。