からんころん
帰り道は塾を通る。
けれど晴紀は別の道を通った。
晴紀の優しさなんだと実果子はわかっていた。
だから余計…苦しくなった。
いろんな思いが涙となって込み上げてきた…
こらえようとしても、溢れてきた。
「勉強いつから始める?」
「…お兄さんが暇な時で…いいです…」
「場所はどうする?女の子の一人暮らしにお邪魔するってのもなぁ」
「そう…ですね…」
「俺んとこ来る?なんだったら住み込みでもいいよ。なんて冗談……」
晴紀は実果子の涙に気づいてしまった。
「ごめんなさいっ…なんでもないん…です…ははは……」
「…いいよ。泣きたいときは泣け。俺黙っとくから」
帰りつくまでにはなんとかしようと思いながら、実果子は溢れる涙を抑えることができなかった。
次の赤信号で、晴紀はポケットからハンカチを取り出して実果子に渡した。
「……ぷっ」
「…え?」
「…っははは…」
「…何!?」
「だって…ハンカチまで黒なんだもん…」
「だって…俺黒好きなんだもん」