からんころん
自分らしく

「…別荘で麦茶でも飲もうか」



晴紀は、すっかり気を落としボロボロ泣いている実果子を支え、別荘へ連れて行った。










「………そう、よかった。じゃあ」



晴紀は実家に電話をかけていた。



「千夏、ちゃんと帰りついたって」

「そうですか…。よかった……」



実果子は麦茶にも手をつけず、ぼぉ~っと抜け殻のようになっている。




「…実果子ちゃん、もうあんまり考え込まないでいいから」

「でも……」

「千夏が…友達をここへ連れてきたのは実果子ちゃんが初めてだよ」

「え…」

「ここどころか家にも誰も来たことなかった。千夏に本当の友達なんて、今まではいなかったんだ」

「うそ、千夏ちゃんの周りにはいつも人が集まって…」

「それは…千夏の持ち物にじゃないかな?言っちゃなんだけどうちはわりと金持ちだし、千夏も欲しいもんは何でも買ってもらってた。それにたかってくる連中にあげたりもしてたからな…」

「…違います!千夏ちゃんはいつもニコニコしてて明るいから、だから…」




< 55 / 227 >

この作品をシェア

pagetop